そのままのあなたでいて


自分達を捨てたブリタニアに復讐する為。
母の敵をとる為。
ナナリーの幸せの為。


そして、自らの存在を確かめる為に。


ルルーシュの行動の根底には、人として当たり前に願う事が隠されている。


そんな彼が。


一番最初に『ルルーシュ』としての存在を認めてくれた彼に特別な意識を持って、持ち続けていた事を誰が否定出来るだろう。
それは汚れる事のない過去で、捨てきれない存在。
いくら彼がブリタニア軍属になろうとも、ゼロとしてではあったけれど、再三の自分の誘いを断ろうとも、二度目の邂逅を果たしてしまえば堪えていた想いは無意識に膨らみ、諦められるはずもない。


ましてや、彼を『殺す』なんて。


「おまえは世界から弾き出されたんだ!ナナリーは俺が…!!」


―――あぁ、お前も俺の存在を否定するのか…


しかし、その事に悲しさの痛みより、ナナリーを誰よりも預けたかった相手からの言葉に安堵する自分がいた。


ナナリーを、お前が守ってくれるなら。
ナナリーを守りたいと、思ってくれる心が同じならば。
それだけは、その願いだけは叶えてくれるなら。
他の願い事なんて胸の奥底へ消し去ってしまえる。
躊躇いは消せる。


「スザクっ!!」
「ルルーシュっ!!」


最初は嫌いだったはずの、でも何よりも欲しかった柔らかなスザクの存在。
銃口を向ける先には震える手を必死に押さえて、自分をまっすぐに射抜く彼の瞳。
この瞬間だけは、大切な妹の存在すらも薄れて、彼の事だけを想う事を許されるだろうか。
久しぶりに見た『枢木スザク』の姿を瞼の裏に焼き付けて、引き金を引いた。


銃身の軽い、銃を―――




END



2007.07.31