水温
雪崩れ込む様にして入ったバスルームは、一般的な感覚からは広いとはいえもちろん二人で入るには狭い。
日本の土地に作られたとはいえこの学園は祖界に設立されたブリタニアの学園だ。
クラブハウスのバスルームは、もちろん入浴する目的では作られていない。
それでも湯を張る事は可能な造りだった為、スザクは適度な熱さで湯を溜めると抱えたルルーシュと共にバスタブへと沈んだ。
「大丈夫?」
後ろから抱きかかえる様にしている為、スザクからはルルーシュの顔は見えない。
先程までスザクに全体重を預けてきていたルルーシュの身体は、浮力によってその負荷を失くしていた。
それでも力の抜けたような手足から推測するのは容易い。
敢えて聞いた問いに対して無言でこくりと頷いた事に、ルルーシュの強がりを感じて苦笑する。
「…スザク?」
「何でもないよ」
何となくスザクの雰囲気の変化を感じたのであろう。
少し怪訝そうにスザクへと振り返ったルルーシュは、気が付けばスザクに顎を捕られ深く貪られていた。
私室よりも響く室内の音に、意識を奪われかけていたルルーシュがスザクの身体を跳ね除ける。
いつの間にか向かい合わせに反されていた身体は、スザクにきつく囚われて動けない。
「ちょっ…離せ、スザク!」
「嫌だって言ったら?」
「何言ってるんだ、明日お前早いって…」
「早起きは得意なんだ」
バシャバシャと水の跳ねる音が、二人の声に混ざって激しく上がった。
部屋を仕切るカーテンが時折揺れて、先程まで静かだった影が急に激しく形を変えて揺れる。
「もうやめろって。折角気持ちいいんだから…」
どうにかスザクの手から逃れて、ルルーシュは疲れたようにバスタブの縁へと凭れ掛かった。
邪魔になったのか、濡れて額に貼り付いた髪をかき上げる。
ルルーシュの言葉はもちろんこの入浴の事を指しているのだが、状況が状況だけに他の意味に聞こえなくもない。
ましてやスザクの目の前でのその行動は、自殺行為だ。
「じゃあもっと気持ちよくなろうか」
「は?何だその親父くさい台詞は…っておい!待て!」
おもむろに腰を引かれたと思ったら、止める間もなくスザクの口唇はルルーシュの身体を滑っていた。
首筋、鎖骨へと流れて胸元へと。
ぴくりと反応を返す事を止める事なんて出来る筈もなく、ルルーシュの身体はスザクの与える刺激に敏感に反応を返す。
「スザ…ク…」
「もう一回だけ、許してね」
その言葉に涙で潤んだルルーシュの瞳が静かに閉じると、スザクは欲を乗せたその口唇を彼に寄せた。
2006.11.13