独占欲 -side S-


脇腹に残る傷跡に、ルルーシュはゆっくりと口唇を這わせてきた。
その辿る手に、口唇に、感覚の全てがそこに集中したかのような感覚に襲われる。
反射的に上がった声は何とか押し殺して、ルルーシュへと視線を向けた。


「痛いか?」


それに対して、否と答える事をきっとルルーシュは分かっているであろう。
声は出さずに首を横に振れば、彼は少しだけ安心したような表情を覗かせる。
ルルーシュへ向ける情欲を隠しもせず、彼のシャワーで濡れた髪を梳けば普段よりもしっとりとそれは指に絡んだ。


「ルルーシュ…」


相変わらず傷跡へと意識を持っていくルルーシュに、気付かれない程度に薄く笑みを浮かべる。
ルルーシュがこの傷跡を気にしている事は知っていた。


「大丈夫だよ、もう痛くないから。」


だから極力気にされないように、激しく動けば引き攣る事は態度には出さなかった。
屋根を落ちてゆくルルーシュを捕まえた時にも、ルルーシュを掴む左手よりも痛みを訴えていたのは右の脇腹だ。
もっともあの時はそんな事に気付く余裕すらなかったから、この痕の事すら忘れていた。
本当は見せるつもりも気付かせるつもりもなかったこの傷跡を、わざと見せた事にもきっとルルーシュは気付いてもいない。
あの騒動の後歓迎会と銘打って開かれた会で、生徒会メンバー内で笑顔を振りまくルルーシュさえ見なければ忘れたままでいられただろう。


「お前は俺のものだ、スザク」


傷跡へと伸ばされた手を捕んで、その手をシーツへと縫いとめる。
白に広がるルルーシュの黒髪は、濡れている事も相まっていつも以上に艶かしく見えた。


それはこっちの台詞だよ、ルルーシュ。


ルルーシュの為だったらどんな嘘だってつく。
ルルーシュには気付かれないように、ルルーシュを守る為に。


白いルルーシュの首筋へと軽く歯をあてると鮮やかに赤が散る。
他へと見せるルルーシュの笑顔に波打った心が、静かに凪いだのが分かった。





2006.11.12

まるでルルスザなノリ。
ちょっとスザクが黒っぽいですが、そんな設定も好きです。
時計が着弾を防いだって事はそんなに傷は深くないのかな?とも思いつつ。でも残ってる方が…(爆)