絶対領域
くたりと力を失ったルルーシュの身体は、シーツに沈んでそのまま意識を飛ばした。
整わない息の中スザクがその身体を見下ろせば、あらゆる場所に所有の紅が散らばっている。
今日付けられた鮮やかな色から、数日は経っているであろうものまで。
跡が消える間もなく身体を求めても、ルルーシュはスザクを拒む事をしない。
最近のスザクは、箍が外れたかのように自分を止められなかった。
ルルーシュが涙を流し懇願する姿すら、欲を煽る要因にしかならず、彼を限界まで追い詰めてしまう。
体力的にスザクに劣るルルーシュがもちろんそれについていけるわけもなく、最後まで意識を保てた事は、最近では全くと言っていい程なくなっていた。
(どうして―――)
ルルーシュが受け入れれば受け入れるほど、その問いはスザクの中で反芻する。
どれだけ酷く扱おうとも、目覚めたルルーシュはスザクの姿を見つけると笑むのだ。
その笑顔にスザクはいつも問いかけを呑み込んでしまう。
いつものように慣れた手付きでルルーシュの身体を清め、しっかりとクリーニングされたシーツへと横たえる。
その間ももちろんルルーシュの意識は回復しない。
生来の色の白さに加えて疲れからか青白い顔は、明らかにルルーシュへの負担を滲ませている。
自分のせいだと分かっていても、そのルルーシュの姿にスザクの顔が曇った。
さらりと乾いた髪を梳けば、軽く身じろぎをしてルルーシュがゆっくりと目を開ける。
「ス…ザク?」
瞳は開いているものの、意識はまだはっきりを覚醒していないらしい。
視界の中にスザクの姿を見つけられないらしく、普段の彼からは想像もつかない酷く寂しげな声だった。
その声は酷く掠れていて、無理に声を出したのかルルーシュが少し顔を顰める。
「飲む?」
スザクはテーブルに用意しておいた水をルルーシュへと手渡すと、こくりと頷く。
ルルーシュの状態は想定内の事だったので、きちんと用意していたのだ。。
ただ、こんなに早くに目を覚ます事は予想外だった。
もう少し、いつものように気持ちの整理をつけてから目覚めて欲しかったのに。
そう思っても、この現状が変わる訳ではない。
まだ精神状態の高ぶった今の状態では、心を、吐き出してしまいたくなる。
「ル…」
「スザク」
(あぁ、ほらまた―――)
その笑顔がスザクから言葉を奪ってしまう。
踏み込めない一歩、踏み込ませない領域。
何故かその不可侵の領域を犯した時、全てが変わってしまう気がして今夜も言葉を封じ込める。
代わりに、濡れた口唇へそっと自らのそれを寄せて。
2007.1.19