ほんのひと時の。
「ルル大丈夫?」
「……ん」
いつもより顔色の悪いルルーシュに気付いたのはお昼ごはんを食べ終わった後、教室へと戻った時だった。
なんとなく普段より口数が少ないとは思っていたが、明らかに昼前より足取りも重い。
保健室に連れて行った方がいいのかな?とシャーリーがルルーシュへと問いかけようとするより一瞬早く、見慣れた姿が視界に入った。
しかもいつの間にか至近距離で、手にした小さな袋をルルーシュへと手渡す。
「ほら、薬買ってきたから」
「あれ?スザクくん?」
ルルーシュの手へと渡ったそれは学校から一番近い―――とは言っても片道15分程度はかかるが―――薬局の袋だった。
がさりと中を取り出せば、時折世話になっている痛み止めの薬が出てきた。
スザクの行動の意味がわからず、ルルーシュは手元の薬からスザクへと、見上げるように視線を移す。
「どうして…」
「だって今日二日目でしょ?」
『ほら、水』と準備よく用意されていた水まで手渡されて、ついでに薬までスザクの手で開けられて、ルルーシュは躊躇う事無くそれを飲下する。
その顔が微かに赤くなっているのは、シャーリーの気のせいではないはずだ。
「あまり体調良くないなら帰る?」
「大丈夫」
生理痛が重いのはいつもの事だし…とスザクに伝えることはもちろん出来ないが、そのルルーシュの言葉に納得したらしい。
スザクはさらりとルルーシュの額へ手を伸ばすと、いつもより高めの体温に触れて、離れる。
「あんまり無理しちゃ駄目だからね。しんどくなったら言うんだよ」
「わかった」
『帰り道、今日は寄り道無しだからね』と念を押すようなスザクに、珍しくルルーシュも頷いて。
そんなルルーシュの様子に、彼女以外には向けることのない、蕩ける様な笑顔を向ける。
「スザク、お昼は…?」
「今から急いで食べるよ。まだお昼20分あるし、大丈夫」
「…ごめん」
「気にしないで」
お昼を食べ終わった生徒達が賑やかに騒ぐグラウンドの音が響く教室で、お弁当箱を開いたスザクは「頂きます」と若者にしては珍しく礼儀正しく挨拶をして箸へと手を伸ばす。
もともとご飯を食べるのに時間をかけるタイプではない―そこは若者らしい姿だ―スザクにとっては、20分は十分な時間だ。
しかし、横でカタリと鳴った音にその手が止まる。
「ルルーシュ?」
「…いたら駄目か?」
「駄目なわけないでしょ」
『明日調子が良かったら、この前言ってたあのお店行こうね』などと食べながらも器用に会話をするスザクに頷くルルーシュの顔が嬉しそうなのは、ルルーシュと付き合いが短くない者からしたらあからさまな程で、思わず手が止まってしまう。
―――これで付き合ってないとか、何で言えるんだこの二人。
教室内に残っていた生徒達は、自分達の安息の昼休みの為にこの状態を見ない振りを決め込む事にした。
そんな周りの行動の事は露知らず、明らかに昼休憩の教室内の空気とは異なる次元で会話を続ける二人に、
「……なんでスザクくんがルルの周期知ってるわけ?」
シャーリーは一人、誰もが疑問に思った――が、誰一人口に出来なかった事を呟いたのである。
あとがき(反転)
きっとこの二人につっこめるのはシャーリーくらいだと思う(笑)
2007.11.18