進展、と後退。


「ルルって、スザクくんと付き合ってないんだよね?」


もう何度聞いたか分からないそのシャーリーの言葉に、これも何度同じ答えを返したか分からないルルーシュの言葉が続く。
はずだった、常ならば。


「…付き合ってない、んだよな?」
「何で疑問系?」


何故かいつもとは違い、疑問符のついたルルーシュの答えにシャーリーも疑問系でしか返せない。
今までならば即答されていたはずだ。
「付き合ってるわけがないだろう」と。


「分からない」
「分からないってどういう事?」
「…付き合ってくれって、言われたわけじゃないから…」


―――あぁやっちゃったのね、スザクくん。


この随分と鈍いルルーシュにとっては、行動とかあからさまな程の好意だけでは、イコール付き合ってるに繋がらないのだ。
確かにきちんとした形式を好むルルーシュにとっては、重大な事であろう。
というか、お付き合いというものの経験がないルルーシュに対しては、もちろん必要な言葉である。
それは間違いなくスザクのミスだが、まさかこんな事で悩んでいるなんてスザクにも通じていないだろう。
スザクも何故か変なところで鈍いから困る。


「でも、傍から見てると付き合ってるようにしか見えないんだけど」


二人が無意識に作る甘やかな雰囲気は、誰が見てもカップルそのものだ。
おかげで、最近ではルルーシュに言い寄る輩は皆無になった。
しかしこんな事で悩むなんてやはりルルーシュもちゃんと女の子だったという事ねと、とシャーリーは自分の事よりも嬉しくなる。
少しだけ寂しそうに呟くその姿は、今までのルルーシュからは想像もつかない。


「じゃあちゃんと言ってあげないとね、スザクくん!」
「え!?」


ガタリ、とルルーシュが後ろを振り向けば、そこには確かにスザクの姿があった。
というか…


「いつから…!」
「最初から」
「聞いてたんなら出てこい!」
「いや、内容にびっくりして出てこれなかった…っていうか、シャーリーは気付いてたはずなんだけど…」


一回目が合ったから、というスザクの言葉に、いつの間にやらいなくなっているシャーリーに対して怒りを覚えるが、それもすぐ霧散した。
いつも振り回している彼女に対して持つ感情としては、間違っている気がしたからだ。
スザクとの事で迷惑をかけている自覚はある、一応。


「…ちゃんと言ってもいい?ルルーシュ」
「な、何を…?」


突然真剣な目つきになったスザクに、今までとは違う幼馴染の気配を感じてルルーシュが思わず身構える。
今までの会話を聞かれていた事を考えれば、いくら鈍感なルルーシュでもスザクの言葉は予測がつく。
だが、覚悟が出来ているかと聞かれれば、それはまた別の話だ。


「好きだよ、ルルーシュ。僕と、付き合ってください」
「スザ…」


「ちょっと、今は駄目ーっ!!」


「「…え?」」


外から響いた声と教室の扉が開くのは同時だったか。
ガラリと通常よりも大きな音を立てて、この教室学年に在籍するにしては小柄な姿が現れる。


「あぁここにいたんだ、ルルーシュ」
「ロロ!?」


突如現れたロロは、どこから調達したのかアッシュフォード学園の制服まで着ていた。
遠慮の欠片もなく教室内に入って、スザクの存在など見えていないかのようにルルーシュへと一直線へ向かうと、その腕を掴んだ。


「探したんだよ、会長さんに呼んで来いって言われて。ほら、行こう」
「ちょっと待ってくれ!離し…」


捲くし立てる様に喋って、自分のペースに持っていこうとするロロに、さすがのルルーシュも反論しようと捕まれた腕を引く。
が、その前にいつの間にかロロに捕まれていた腕は慣れた暖かな手に包まれていた。
その感触にほっとルルーシュが息をついたのは、きっと無意識だ。


「気軽に触らないでくれるかな。俺のなんだから」


『俺』!?


と、突っ込みたくなったスザクの一人称に関して、ロロは何でもないようにルルーシュの腕を離した。
緩く、でも拘束するようにルルーシュの手を離さないスザクに対して、微笑を浮かべてみせる。


「本性現したね、枢木」
「だから何だ。お前には関係ないだろう」


明らかに声変わってますけど、枢木スザクさーん!と突っ込みたくても突っ込めない出歯亀組のシャーリーとリヴァルは、教室外から見ている事しか出来ない。
それに比べてルルーシュはスザクへと振り向くと、少しだけスザクの腕を引いた。


「スザク、駄目だぞ。約束しただろ?」
「…分かってるよ、ルルーシュ」


にこり、といつもの笑顔を見せてルルーシュを腕の中に閉じ込めたスザクの雰囲気は、いつもと何も変わらない。
ルルーシュを抱きしめたままでロロに対して向けた笑顔は、凍りつくように冷たかったけれど。


「俺、何も見なかった事にする」
「私も」


危険回避能力だけは着実にレベルアップしている二人は、こうして今日のことを記憶から抹消する事にしたのである。



あとがき(反転)
あれ?
何が書きたかったんだっけ…?(爆)
まとまりがなくなってしまいました…


2008.05.01