代価と代償。
*注意
Sound Episode1のネタバレを含みます。
視聴していない人は回れ右してください。
また、一部を利用したシャーリーの妄想ではない別設定です。
OKの方のみスクロールをお願いします。
「ルルーシュ、分かっているよな?」
スザクの投じた言葉に、その場の全員が凍りついた。
猫撫で声を出していたカレンも、
久しぶりに名前で呼ばれたわ、なんて思い出にひきづられそうになったミレイも、
悪ノリしていたリヴァルも、
楽しげに微笑んでいたナナリーも、
そして状況に置いていかれていたシャーリーも。
ルルーシュの足元のアーサーさえも動こうとしない。
それ程の迫力を孕んでの言葉だった。
「…スザクさん、その…怒ってしまわれました?」
その緊張状態を崩したのは、ナナリーの一言。
彼女の他に、この状態で口を開けるものなどいるはずもない。
ほんわかとした雰囲気そのままに、少し困ったように首を傾げる。
その言葉にも反応を返さないスザクに、ミレイがいつもの調子を取り戻すと颯爽と立ち上がって腕を組んだ。
「いやぁねぇ、スザクくん。これは御芝居なんだから。ね?」
種明かしをすれば、シャーリーを驚かせる為にミレイが企画した計画だったのだが、途中でスザクが入ってきたのは誤算だった。
ミレイに男女逆転祭り見送りの代価として参加をさせられていたルルーシュも、彼の存在はもちろん計算に入れていない。
「…か、会長!御芝居ってどういう事なんですか!?」
「だってこんな事起こるはずないじゃん。分かりそうなもんだろ、ふつーは」
「シャーリーは彼の事になると回りが見えなくなりすぎなのよ」
ミレイの言葉に追随して、各々に見合ったリアクションを起こす。
その中で唯一全くのリアクションを返さなかったのは当のスザクと、話題の中心におかれていたルルーシュだった。
今までの雰囲気が嘘のように、室内はいつもの賑やかな雰囲気を取り戻す。
アーサーもいつもの定位置に戻り、欠伸をして丸まってしまった。
その平穏な生徒会室内に一部切り取られたような空間で、ガタリと音が響いた。
(何も気付いてません何も見てません何も知りませんーっ)
その場の全員――もちろんナナリーは含まれていない――がその音の発生源を見る事なく目を逸らす。
騒ぐ声はそのままに時が過ぎるのを待てば、二人分の足音、扉の開く音、扉が閉まる音とが響いて消えた。
消えた足音に、室内でため息がもれる。
「か、会長〜〜俺明日教室行くの怖いんですけどっ!」
「まぁ、大丈夫じゃない? たまには発散させないとねぇ」
「はい?」
「それよりお茶にしましょ。じゃーん!限定のケーキを買ってあるのだ!」
「さっすが会長!」
「もっと褒めるが良い良い」
シャーリーの歓喜の声に、リヴァルの問い掛けはあっさりと消された。
「そんなに怒る事ないだろう。いつもの会長のお遊び…」
「じゃぁ何で僕に黙ってたの?」
「…ついさっき決まったんだ。お前に話す時間も暇もないだろう」
ルルーシュはそうは言ったが、もちろん連絡手段がなかったわけではない。
企画が決まった後も何度かスザクとは会っている。
ただ、お遊びとはいえ、その内容に言う機会を逸してしまったままになってしまっていたのだ。
ルルーシュとしては強気には出れない。
彼の態度を見ればそれは明らかだったが、スザクはあえてルルーシュへと尋ねるポイントをずらした。
「ルルーシュは平気なの?」
「何がだ?」
「もし立場が逆だったら平気なの?」
「……平気、じゃない」
ルルーシュの珍しく素直なその言葉に、スザクは深呼吸を一つする。
そのスザクの様子に、ルルーシュはその手を彼の腕へとかけていた。
おそらくスザクの行動を受けての無意識の行動だろう。
その行動に思わずスザクに笑みが浮かぶ。
「ホント、ルルーシュの腕に会長が絡んでた時はどうしようかと思ったよ」
「そんな事してたか?」
「…気付いてなかったの?」
きょとんとしたルルーシュの様子に、スザクががっくりと肩を落とす。
散々自分が気にしていたのが馬鹿みたいな程あっさりとした反応だ。
「特に気にしてなかったな」
「ふーん…気にしない程自然な事だったって事か」
「違うだろ!」
「分かってるよ。相手を気にしてれば気付くはずだもんね」
一番身近にいたはずの肉親以外の女性、しかもあれ程の美人に対してもこの態度。
あの距離から考えるとかなりおいしい状況になっていたはずなのだが、その状況に全く気付いてないとなると相手を異性として見ていない事になる。
それくらいはスザクにも分かっているのだが、ルルーシュ相手だとついからかいたくなるのだ。
「…お前、やっぱり性格が悪くなったな」
「じゃあ期待にお応えして虐めてあげるよ、ルルーシュ」
「…遠慮する」
スザクの口調に、ルルーシュは捕まれた腕をそのまま一歩退いた。
―――後日。
「会長!何で男女逆転祭りなんですか!?」
「ごめんね〜スザクくんのリクエストなの」
「スザクっ!!」
「やっぱり似合うね、ルルーシュ」
代価として小芝居をさせられたにも関わらず、学園ではきっちり一週間後、当初の企画通り男女逆転祭りが行われていた。
しかも。
「なんでお前は普通なんだよ!」
「何でだろうね」
「ちょ…!こら!触るなっ!!」
抱き寄せるように腰へと伸ばされたスザクの手は、その相手によってぱちんと軽く叩かれた。
それは無視してそのまま引き寄せると、反論しようとルルーシュが口を開きかける。
「じゃあスザクくん、はい鍵」
「ありがとうございます」
「…は?鍵?」
目の前でのやり取りに、ルルーシュは逃げに出ていた身体を停止させた。
思い掛けない流れに、言葉にしようとしていた事もすっかり抜けてしまっているようだ。
そんなルルーシュの前でミレイからスザクへと渡った鍵といえば、生徒会室の物だった。
すなわち、現在地の鍵である。
「じゃぁごゆっくり〜」
「ちょっと、会長!?」
「逃げ道はないからね、ルルーシュ」
回す腕に力を入れれば、ルルーシュの身体はあっさりとスザクの腕の中へと落ちてくる。
女子生徒の制服を着ているせいか、華奢な身体のラインが引き立って、それが普段の彼の雰囲気をも変えてしまっていた。
惹かれる様にスザクがルルーシュを見れば、長い睫を震わせて視線を逸らされる。
これで落ちない奴なんていないだろう、と思うのはスザクの欲目が混ざっているせいだろうか。
「スザク…目が本気なんだが…」
「僕はいつだって本気だよ。君の事に関してはね」
「言いながら脱がすなっ!!」
勿体無いと思いつつも、慣れた手付きで襟元からその着衣を崩してゆく。
そこに先日つけた薄い跡を見つけて、同じ場所に口付けを落とすと、ルルーシュがぴくりと身体を震わせて小さく声をあげる。
「大丈夫。最後まで面倒みてあげるから」
そう言ったスザクの手からは、先程の鍵が音を立ててテーブルへと投げられた。
2007.04.19
あとがき(反転)
なんていうか素晴らしき配信でした!という勢いで。
あのスザクは間違いなく攻めでしょ!と一人拳を握り締めた夜でした。
踊らされてるのは分かってるけど、やっぱり買っちゃうんだよなー6枚とも。
しかしシャーリーのルームメイトはホ○標準装備か…!