七年前
*注意*
ザスニ(雑誌)内の小説のネタが含まれております。
ネタバレを避けたい方はご遠慮ください。
設定的には、テレビ基本です。
冒頭部分だけ利用です(笑)
それでは、大丈夫な方はどうぞ。
七年前、取り巻く世界はごく狭いものだった。
それでもまだ子供だった二人にとっては、それが世界の全てで、それは不変と信じていた。
いや、信じていたかった。
「はい、これ」
「…梨?」
スザクから差し出された紙袋を受け取ったルルーシュは、スザクに促されるままに中をのぞく。
わざわざクラブハウスまで何を持ってきたかと思えば、中には梨がきっかり5個。
確かに学校で渡されても扱いに困るが、突然どうしたと言うのだろう。
今の季節には似つかわしくない果物に、ルルーシュは首を傾げた。
「軍で貰ったんだ。何か懐かしくってさ。ナナリーにあげたくなっちゃって」
「懐かしい?」
「うん、懐かしいよ」
言ったスザクは何を思い出しているのか、楽しそうに笑う。
しかし、ルルーシュにはその理由が分からなかった。
スザクの笑みは悔しかったが、悪意のある笑みとそうでないものの区別くらいはルルーシュにはつく。
スザクの事となれば尚更だ。
それでも、気にならないといったら嘘になるのが人間の心情というものだろう。
「…だってルルーシュとのきっかけをくれたものだからね」
「―――あ」
きっとそのルルーシュの考えに気付いたのだろう。
スザクが笑顔で告げれば、七年前の記憶の糸を引きずり出される。
鮮やかな空、潰れた梨、力強い声に続いて視界に入った紺の色。
「思い出した?」
「…思い出したくなかったんだが」
はっきり言ってお互いに良い思い出とは言えないだろう。
第一印象は最悪。
二回目の出会いもそれを引きずったまま。
お互いに互いを認められなかったあの態度は、今ならば子供特有のものだと笑ってすませられるものだ。
しかし、七年前のあの日は自分の世界の持つが全てだったのだ。
「あの頃はルルーシュよく突っかかってきたもんね」
「それはそっちの方だろう」
あの出会いで、ルルーシュはスザクの中にある優しさに気付いた。
スザクはルルーシュの中にある温もりに安らいだ。
まるで欠けていたパズルのピースがはまったかのように、お互いに求めていたものを見つけた。
「そうかな」
「そうだ」
「でも、あの時僕があそこに行ってよかったね、ルルーシュ」
「言ってろ」
含まれている意味に、ルルーシュははぐらかすようについ、と視線をずらす。
あれは、立場による偶然の出会いが、かけがえの無い運命の出会いに変わろうとした瞬間だった。
七年後、取り巻く世界は少しだけ広がった。
そしてあの頃少しだけ重なっていたはずの二人の未来は、今や道を完全に別とうとしていた。
いつか―――
彼の事だけを想って、彼の姿だけを見て、彼だけを守って。
全てが終わった先に、生があると疑いもせずに。
2007.03.04