STAGE21 学園祭宣言!


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「ナナリーに余計な事を言ったみたいだね」
「何を…スザク?」


とりあえず騒ぎが治まるまで、とアッシュフォード家に用意された部屋でスザクは冷たい視線を彼女に向けた。
今までに彼女が見た事のないようなその視線は、いつも側に控えてくれた彼からは見た事が無いものだ。
咄嗟に言葉が出てこなくて、詰まる。


「選ぶと思った?君を」


銃口を向けられて、信じられないという表情を浮かべた彼女。
スザクが騎士としての誓いを立てたユーフェミア・リ・ヴリタニア、その人だった。


「そんなわけないじゃないか、7年前から俺は彼だけの騎士だよ」
「彼…?」


偽りの宣誓は許されざる罪だ。
あの時表には出さなかったものの、スザクは内心怒りで爆発しそうだった。
国内中継されたあの模様は、きっと彼も見たであろう。
そして、イレブンである自分を手中に収めて彼女の回りも反発しないわけが無い。
権力に守られ育てられた存在は、そんな現実を受け入れようとせずに理想論を繰り広げて実行してしまう。
ただ、ヴリタニア皇家の第三皇女という肩書を持つが故に。


「副総督としての立場を利用して俺を騎士にして、政治に足を突っ込んで特区を作って、イレブンの人気取りをして、自己満足は満たせた?」
「そんな私はっ!」


反論しようとした彼女を、スザクの気配が押しとどる。
枢木家の嫡男として、確かにはみ出し者であったスザクだったがその血は本物だ。
持つ威圧感は、施政者としてのそれを持っている。
それに加えて軍内で培った彼の精神力は、皇家に守られてきた彼女では太刀打ち出来るはずも無い。


「そんな事をしてルルーシュの気を惹けると思った?」
「!」
「逆効果だね。君はルルーシュの事を一つも理解していない」


ナナリーに会ってルルーシュに再会して、あの時に時を戻せたらと彼女が願った事は罪ではない。
確かに幸せだったはずのあの時間は、彼女にとっては何よりも大事なものなのだろう。
それと同様に、いやそれ以上にスザクにも譲れない大切なものがある。
7年前、怯える事無く自分に向かってきた彼。
日本内でおそらく唯一、自分にだけ心を砕いてくれた存在。
何故だかは今でもわからない。
ただ、彼の存在は自分の中で特別になった。


「ルルーシュの障害になるようなら、容赦する気は無いよ」


その言葉にユーフェミアが息を詰める。
スザクの言葉が偽りではないと、わかっているのだろう。
統治者としての能力が足りなくても、彼女は馬鹿ではない。
気配で感情を感じ取ることには、王宮にいれば自然と慣れる事だ。


「ここで邪魔な君を殺す事も出来るけど、自分の為に力を使う事は止めたんだ。ルルーシュの為だけにしか使わない」
「…そうしてルルーシュに全ての責任を押し付けて、ですか?」
「違うよ。ルルーシュの責任は全て俺の責任だ。彼の全ては俺のものなんだよ。…そんな言葉で惑わせようとしても無駄だ」


スザクの言葉に、ユーフェミアにはこれ以上どうしていいのか判らなかった。
ルルーシュが日本に送られてから今までの間に、何があったのかは全く判らない。
ただ、枢木スザクという存在がルルーシュの側にあり、またこれからもあり続けるであろう、という事しか。


「今日はお忍びでしょう、SPとお帰りください。騎士の任を解かれるかは貴方の判断に委ねます」


その言葉に甘えて任を解く勇気は無かった。
ぐっと握ったスカートが皺を作ると同時に、スザクは背を向けると部屋を後にする。


泣く事は出来なかった。
SPが部屋に入ってきた時にスザクへの疑いがかかる。
ユーフェミアは顔を上げると入れ替わるように響いたノック音に顔を上げた。


いっそ、泣けてしまえばよかった―――




2007.03.16