・Please wait...
*以下死ネタになります。
暗いです。ハッピーエンドじゃありません。
本編が痛すぎたので、トコトン落ち込む事にしました。
大丈夫な方のみ、スクロールをお願いします。
全てが遅すぎたのだ―――
そう悟った時すら、遅すぎた。
ユーフェミアが崩れたその瞬間、ゼロに向かって放たれたそれは人の命を奪うには十分すぎる程の凶器で、ゼロの手に握られているものと同質のものだった。
その引き金を引いたのは枢木スザク。
ユーフェミアのただ一人の騎士。
「ゼロっ!!」
騎士として、主ユーフェミアの復讐を。
ルールとしては間違っていない。
少なくともスザクが属するブリタニアの立場としては、ゼロは許されざるテロリストであり、皇族殺害という大罪を犯した罪人だ。
ゆっくりと倒れたゼロに見向く事もなくユーフェミアの身体を抱き起こせば、彼女自身のものとそして他人のものとが混ざった血がスザクの白を汚す。
明らかな致命傷からは鮮血が止まる事無く、ユーフェミアの体温を急速に奪っていく。
命が流れていく事は、誰にも止められない。
「ど…して?」
「ユフィ!」
特区日本への申請を望む人々の列を見た彼女の笑顔は、偽りではなかった。
今までの彼女の言動を考えれば、この惨劇はどう考えてもおかしい。
指令を出したユーフェミアに無条件に従った兵士達。
皇族からの命令は絶対というルール。
自ら、二度と破らないと誓った事だけれど、それがこの状況を生み出すというのなら、間違っていたとでもいうのだろうか、自分が。
「どうして君が…ゼロに何を…!」
「殺さ、なきゃ…にほ…人は…」
「ユフィッ!!」
「ね…そ、でしょ…?……ル、ルーしゅ」
「!!」
ユーフェミアが手を差し出した瞬間、その手は力を失って地に落ちた。
その手が向かう先には―――ゼロ。
ユーフェミアがルルーシュと呼んだ、相手がそこにはいた。
「ま、さか…」
ユーフェミアの身体をそっと下ろすと、ゼロの仮面へと手をかける。
まだ死んではいないはずだ。
即死の急所は外している。
「や、めろ…くるる、ぎ」
抵抗するようにスザクの身体を押し返しても、ゼロにそれ程の力は残されていない。
何の抵抗にもならず、スザクはその偽りの姿を暴いた。
硬質なそれから流れ出たのは、漆黒の髪。
クセのない、見慣れた色。
「るるーしゅ…?」
「やめろと…言っただ、ろ…」
開かれた瞳はどこまでも愛しいはずのアメジスト。
左目が微かに紅に反射している気がするのはきっと気のせいだろう。
血の気を失った顔は、今までスザクが見てきた中で一番白さが引き立つ色だった。
もちろん、死の匂いのする白。
「まさか、君が…ユフィを…」
「…やはり、お前に、あの時ギアスを、使うんじゃなか…った」
ルルーシュがスザクの問い掛けに答える事はしなかった。
スザクの問い掛けが聞こえていないわけではない。
どんな経緯であれ義妹を手に書けた事は事実で、直接的ではないにしろルルーシュが日本人を虐殺した事も事実だ。
何を言っても、詭弁になる事はわかっていたから、敢えて事実は伏せた。
そんな事と言っても何が変わるわけでもない、この状況が。
「俺のこと…忘れろ、と、つかうべきだっ…んだ…」
「何を…言ってるの?ルルーシュ」
きっと、ルルーシュが助からないとスザクも分かっている。
即死しない程度に、緩慢に死が訪れるように、そう狙って撃ったのは他でもないスザクなのだ。
ルルーシュも、それは十分分かっていた。
ただ、『ゼロ』ではなく、『ルルーシュ』を撃ったという事実をスザクに遺していく事だけが、ルルーシュの最大の心残り。
『ルルーシュ』という存在自体を、スザクの中から消してしまいたかった。
でもそれは叶わない願いだ。
ギアスのオンオフが自らの意思で効かなくなったとしても、ユーフェミアへの状況から考えると回数制限のロックは解除されていない。
「だから、『生きろ』スザク」
びくり、と意識を支配されたように身体を震わせたスザクの姿に、ルルーシュは寂しげな笑みを浮かべた。
彼へ生きる理由を。
たとえそれが、彼のとって枷でしかないとしても、誰よりも『生きて』欲しい。
誰かのために死ぬのではなく、誰かのために生きて欲しい。
ただそれが、ルルーシュ・ランペルージであった自分の為でない事が悲しいだけ。
2007.03.27