エネルギーチャージ・コンプリート。



引かれる手をそのままにしていれば、嫌でも他の生徒の目を引く事になる。
ただでさえルルーシュという人物は目立つ立場にあり、スザクもまた彼とは違った意味で知られた存在だ。
いつもならこの状況を甘んじて流すルルーシュではない。
しかし、握り返してくる事はないにせよ、何故か今日は抵抗する事無く大人しく手を引かれている。
その事に疑問を持たなかったわけではないが、運良く他人とすれ違う事がなかったからに違いないと、スザクは判断する事にした。
他の理由を、スザクが考えられなかったわけではないが。


「…スザク?」
「クラブハウス。会長さんに言った手前、ね」


『何処へ?』と続くルルーシュの言葉を待たず告げたとおり、スザクの足は真っ直ぐにクラブハウスへと向かっていた。
自室として与えられている部屋へと直行すれば、誰もいない建物内に二人の足音だけが響く。
スライドした扉に滑るように入ると、スザクは掴んだままだったルルーシュの手を引き、その身体を腕の中へと閉じ込める。
何の抵抗もなく落ちてきた彼に、先程の続きを、と言わんばかりに接吻を落とす。
今度はゆっくりと、確実に熱を伝えるかのように。


徐々に室内の空気を染め替えて、上がる息遣いと乱れた水音だけが二人の鼓膜を刺激する。
つ、と透明な雫がルルーシュの口端から流れると、それを追うようにスザクが首筋へと口唇をずらした。
ぴくりと反応を返すルルーシュに、首元へと顔を埋めたまま目線だけを上げる。


「ルルーシュは、寂しくなかった?」


見ればルルーシュの瞳は既に涙の膜が薄く張られ、スザクを見下ろす紫は艶を含んで壮絶な色香を漂わせていた。
引き摺られそうになる自分を抑えてわざと視線を逸らすと、ペロリと首筋へと舌を這わせて彼からの言葉を促す。


「…どうだろうな」


ルルーシュがいつものように言葉を落とすと、少しだけ笑みを浮かべてスザクが掴む手に力を入れる。
けれど精一杯の強がりは、言葉と共に握られたその手に全て代弁されている。
ルルーシュのプライドが『寂しかった』と言う事を許さなくても、スザクにとってはそれだけで十分過ぎる程十分だった。


「僕は寂しかったよ、ルルーシュ」


ルルーシュは決して自分からスザクを求める事をしない。
その事にスザクが悩んだ時期ももちろんあった。
しかし、ルルーシュが一人でいる時の寂しそうな、泣き出しそうな表情に気付いてしまった時の後悔はスザクは今でも忘れない。
言わないのではない、言えないのだと。


「会えなかった分、もっとルルーシュに触らせて?」
「っ、そんな恥ずかしい事を真顔で言うな!」


向けたスザクの視線とぶつかって、今度はルルーシュが視線を逸らしてしまった。
その顔は学園にいる時やナナリーといる時とは違う表情で、スザクを無意識に誘う。
もっと彼の顔を見たくて目線の高さを合わせると、再びその口唇へと熱を移した。


「ルルーシュ、愛してるよ」


『…俺も』と音にならない言葉を乗せた口唇は、甘い嬌声を紡いで堕ちていった。



2007.05.07


あとがき(反転)
な…難産でした…。
こんなに梃子摺るはずじゃなかったのですが、気がつけば「あぁぁっ!このまま行ったら裏行きーっ!!(汗)」と悲鳴を上げながら寸止め。
くるるぎさんに暴走されて非常に困りました…いっそのこと開き直って裏にいってやろうかとも思いましたよ(笑)